仕事が嫌になったからブロードウェイでミュージカル観てくる

映像業界経験のある事務職員。観劇への情熱だけが残っています。

上海「Sleep No More」(準備編)

観劇日:2019年5月1日

会場:The McKinnon Hotel(上海)

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ずっと気になっていた上海Sleep No Moreをようやく体験できました。一泊二日の弾丸でしたが、3時間仮面を被って役者さんを追いかけ回すという、なかなか贅沢な経験ができました。行って本当によかったです。

【チケット手配】

チケットはスマホで下記URL↓から手配しました。職場のお昼時間に思い立って笑。

不眠之夜

【ホテル】

初中国で、中国語が全くできないので、宿泊先は日系のオークラガーデンホテル上海を手配。会場のMcKinnon Hotelの最寄駅「南京西路」から地下鉄12号線で一駅のところにあるホテルです。

花園飯店(上海)官网/ Offical Site of Okura Garden Hotel Shanghai / オークラガーデンホテル上海公式サイト - Offical Site of Okura Garden Hotel Shanghai

ホテルのスタッフの皆さんが日本語話せる人が多くて(話せない人もいる)、感じがよくて、お土産も日本人好みのものが買えて、大正解でした。予約する前にOne harmony会員になると、優先的にチェックインさせてもらえたりします(登録料無料)。

会員エリア - Offical Site of Okura Garden Hotel Shanghai

地下鉄12号線は、東京の地下鉄みたいにきれいで、夜も安心して乗れました。

【空港からの移動】

到着後のホテルへの移動は、初中国ということで、少し奮発してVELTRAの空港送迎をお願いしました。

【空港送迎】上海浦東空港⇔上海市内ホテル or 上海ディズニーランド地区ホテル<貸切チャーター/中国語ドライバー>

ドライバーのお兄さんはとても感じのいい人で、こちらも正解。帰りは地下鉄を利用しました。

【事前の予習】

マクベスのあらすじをネットで調べた程度。ポイントになるシーンさえおさえていれば、なんとかついていけるものだなという印象です。

本当は、野村萬斎も絡んでいるという新訳を読んでみたかったのですが、間に合いませんでした。

新訳 マクベス (角川文庫)

新訳 マクベス (角川文庫)

 

【アプリなど】

役に立ったのは、以下の2つ。

1.百度地図

百度地图

中国版Google Map。現地では特別回線を使えばGoogle Mapにも繋がるのですが、位置情報がずれたりして、使いものになりません。

私は、百度地図で事前に行き先への道順を調べ、スクリーンショットで保存しました。そうすればネットが不安定でも安心でした。アプリもありますが、ブラウザで利用しました。

2.有道翻译官

http://shared.youdao.com/dict/market/2016fanyiguan/index.html

日本語→中国語に翻訳できるアプリ。VELTRA送迎のお兄さんや、コンビニのお姉さん、フットマッサージのお兄さんとのコミュニケーションに利用しました。要ネット環境です。

アプリの機能としては、中国語→日本語もできるのですが、自分のスマホで中国語入力ができないので、実質日本語→中国語のみの利用。

 

当日編に続きます。

プリシラ(日生劇場)

観劇日:2019年3月21日

劇場:日生劇場

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1994年のオーストラリア映画がブロードウェイで舞台化されたものの日本語版。シンディ・ローパーやマドンナなど懐かしい曲の数々にのせてドラァグ・クィーンを描いた作品で、傷ついた心への優しい眼差しを感じました。演出は宮本亜門

【あらすじ】

シドニードラァグクィーンをしているティックは妻子と別居中。息子には自分の仕事を「ショービジネス」とだけ伝えている。

ある日妻のマリオンから電話があり、彼女がオーナーであるカジノでショーをして欲しいと言われる。ティックは引退したトランスジェンダーのバーナデットと、仕事仲間のアダムに声をかけ、プリシラ号と名付けたバスで、オーストラリアの真ん中にあるアリス・スプリングスを目指すが…。

【以下、ネタバレを含む感想】

「まだLGBTへの偏見が今より大きかった時の話」というような内容のテロップから物語が始まります。

最初のステージシーンで「もう愛なんていらない」と歌われるのを皮切りに、理解されないことや受け入れられないことの哀しみが通奏低音のように流れている気がしました。

キャストの中では、バーナデットを演じる陣内孝則が存在感がありました。ヒールは歩きにくそうだったけど、着ている洋服もセンスがよくて、上品で、メリル・ストリープのような雰囲気。ミュージカル「深夜食堂」にも出演していたコーラスのエリアンナは迫力満点。シンシア役のキンタロー。も異彩を放っていました。ティックの息子ベンジー役の子が、セリフに心がこもっていて、とても上手でした。

ティックとアダムは、2階席だったのもあって、どちらがどちらかよくわからなくなることが多々ありました。同行者も同じ感想を持ったようです。

ゲイの主人公と別居妻の仲が良いのは、ボヘミアン・ラプソディーに似てると思いました。

一番印象的だったのは、劇場全体がエアーズロックになったような瞬間。壁や天井が岩のような質感で、座席の色も桃色だったので、劇場の特徴がよく生かされていると思いました。

ディスコナンバーのショーシーンも華やかで、優しい気持ちになれて、楽しめる舞台でした。

 

Priscilla: Queen of the Desert

Priscilla: Queen of the Desert

 

 

愛のレキシアター『ざ・びぎにんぐ・おぶ・らぶ』

鑑劇日:2019年3月10日

劇場:TBS赤坂ACTシアター

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レキシのファンなので、内容がイマイチよくわからないながらも、怖いもの見たさで行ってきました。これも一種のジュークボックス・ミュージカルと言えるのか…?

【あらすじ】

長年家に引きこもっている"織田こきん"。彼の唯一の楽しみは、歴史オタクのネットアイドル カオリコの動画を見てコメントを書き込むことだった。ある日、母親と引きこもりサポーターの明智と共に、テーマパーク"レキシーランド"に行く事になった こきん。そこで偶然、憧れのカオリコと対面することになるが…。

【以下、ネタバレを含む感想】

ショートコントをレキシのナンバーで繋げたような内容。親子愛とか、虚像と現実の自分とか、いくつかテーマはあるようなのですが、正直よくわからなかった。レキシの楽曲の力と、芸達者な役者さん達の力で成立しているような作品でした。

主役の山本耕史は生で初めて観ましたが、歌が本当に上手。聴かせます。引きこもりなのにダンスキレキレだし腕力もあるのがおかしい。八嶋智人の1人で場を盛り上げる力には感服。テレビで見ているだけではわからないものでした。藤井隆は「その頃〇〇は」の一言で笑いを取るのはさすが吉本と思ったし、高田聖子も芸達者。浦島りんこの歌も迫力でした。松岡茉優は、ネットアイドルの微妙な感じがはまっていました。佐藤流司義経ぴったり。殺陣もお見事。ダンサーさん達もキマってました。

笑えていいストレス発散になったし、稲穂を振りながら「狩りから稲作へ」を聞けたのもよかったのですが、あまりに内容がめちゃくちゃなので、誰にでも勧められるものじゃないかな、という感想。人によっては怒るんじゃないかな…。これが今後どんな風に変化していくんだろうという興味はあります。

一番印象に残ったシーンは、オール一休の分厚いコーラスでした。

 

ヴァージニアウルフなんかこわくない(NTL)

鑑賞日:2019年3月3日

映画館:ヒューマントラストシネマ有楽町

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【あらすじ】

歴史学者のジョージと大学総長の娘であるマーサは中年の夫婦。大学関係のパーティー後、すでに夜中の2時にもかかわらず、マーサは新任教授のニック夫婦を自宅に招いたという。若い2人の前で夫の無能さを嘆くマーサ。我慢の限界を超えたジョージは反撃に出るが…。

【以下、ネタバレを含む感想】

とにかく冒頭からマーサが酷い。モラハラ人格障害?と思える発言と態度で、父が大学の最高権力者であるがゆえに、誰も彼女を止められなかったのだな、という感じ。客人の前で夫のプライドを、これでもかというくらいにズタズタにして、あれを続けられたら鬱になってしまうのではないかと思った。後半は夫も負けじと執拗に仕返しをしていく。

野心家の新任教授ニックは、お笑い芸人のパックンに似てるな、と思いながら観ていたら、なんと「夜中に犬に起こった奇妙な出来事」のクリストファー。雰囲気が全く違うので気づかなかった。役者ですねえ。映画「ボブという名の猫」でも主演を務めているよう。

ニックの妻ハネーが典型的な「おつむの弱いブロンド娘」なのは、初演が50年前だからかなと思った。彼女の天然に救われる場面は多々あった(「バイオレ〜ンス」は最高)。

物語はあらぬ方向に進むので、「不条理劇なのか?劇場もハロルド・ピンター劇場だし」と思ったくらい、待てども待てども落としどころが見えてこない。すべては精神を病んだマーサの頭の中の出来事なのかと思う瞬間もあった。

最後の最後でようやく、夫婦の作り上げた虚構が夫の手によって破壊されて、不思議な静けさで終わった。今までのバトルが嘘のようにマーサをいたわるジョージ。

しかし、あんなに傷つけ合って、夫婦の絆が残っているものなのだろうか。現実なら、離婚や裁判沙汰になるのではないか。あの結末に至るまでに、あんな長時間の罵り合いが必要なのだろうかと思ったりもした。それとも、既婚者の皆さんは私の知らないこういった修羅場を経験されているんだろうか。観てよかったけど、他の人に勧めるかどうかは微妙だな、という感想。

不思議だったのは、3時間近く罵倒を聞かされて、思ったより負担に感じなかったこと。私は人の言い合いが嫌いで、テレビでも不穏なシーンはチャンネルを変えてしまうたちなのだけれど、帰路に清々しささえ感じていている自分に気づいて、戸惑った。緊張と弛緩の効果なのか。あるいは若夫婦が意外とリラックスしていて、ピリピリしていなかったからか。キツネにつままれたような、何とも奇妙な気持ちにさせられる舞台だった。

4月にシスカンパニー大竹しのぶ版が再演される予定だったが、演目が変更になったようで残念。段田安則がジョージで稲垣吾郎がニックとは、観てみたかった。

 

こちらはエリザベス・テイラー主演の映画版。

バージニア・ウルフなんかこわくない [DVD]

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王様と私(TOHOシネマズ日比谷プレミア上映)

鑑賞日:2019年2月22日

映画館:TOHOシネマズ日比谷

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(写真を撮り忘れたので、タイのイメージ画像。こんなシーンも出てきます)

子どもの頃、テレビでユル・ブリンナー版の映画を観たときは、デボラ・カー演じるアンナの美しさ聡明さ(と広がるスカート)に感銘を受けました。それ以来Shall We Danceは大好きな曲です。音楽はロジャース&ハマースタイン。タイでは、不敬罪にあたるという理由で、上映禁止なのだとか。

今回観たのは、ニューヨークのリンカーンセンターカンパニーの2018年ロンドン公演録画でした。

【あらすじ】

時は1860年代、アンナはシンガポール領事館からの依頼で、シャム国王の妻子の家庭教師を引き受けることになった。約束されていたはずの家が与えられず、王に抗議するアンナだったが、愛らしい子供達に教えることにやり甲斐を感じ、子供達や王の妻達もアンナを慕うようになった。そして王自身もアンナに一目おいていた。

ある日、イギリスからの公使がシャムを訪れることに。シャムが野蛮な国と思われて保護国にされることを王は恐れ、悩んでいた。王から使用人扱いを受けて腹を立てていたアンナだったが、チャン王妃の促しもあり、ヨーロッパ様式で大使をもてなすことを王に提案するが…。

【以下、ネタバレを含む感想】

渡辺謙の存在感が凄かったです。コミカルな演技で笑いを取ることが多い役なのですが、ふとした瞬間に王の威厳が垣間見られるのはさすがだと思いました。そして表現の引き出しが豊富。改めて優れた役者さんなのだと。首相役の大沢たかおは、やや一本調子ではあったけれど、こちらも貫禄十分でした。かなりふっくらしていたのは役作りなのでしょう。

ケリーオハラのアンナは、歌唱力は言わずもがな包容力と聡明さを兼ね備えた素敵な女性。相手が王であろうとも自分の尊厳を失わず、でも温かさのある態度で、王の信頼を得ていく姿は清々しいものでした。以前METライブで観たコジ・ファン・トゥッテよりもこちらの方が彼女の良さが存分に引き出されている気がしました。

そしてチャン王妃を演じたラシー・アン・マイルズがこれまた素晴らしい。感情を抑えた歌の背後に、王への愛が滲み出ていて。彼女もケリーオハラと共にトニー賞を受賞したのですが、納得です。タプティム役の女優さんもお上手でした。

途中、日本エレキテル連合みたいな人達が出て来る劇中劇では眠くなりましたが、クライマックスの「Shall We Dance」のシーンは、やはり心踊るものがありました。王様の前なのに昔のロマンスを思い出して思わず1人で踊ってしまうアンナは、けっこう天然というか、夢見がちでロマンチストな面もあるんだなと思いました。

問題になる差別的な描写ですが、特に床に伏して礼をする作法について、アンナが「カエルみたい。あんなことはしたくない」と歌うところは、ちょっと戸惑いました。日本でも同様の作法があるので、ラストで新しく王になる息子が、それを禁ずるところも、スッキリしない感じはありました。

印象的だったのは、王がアンナに、必ず自分より頭の位置を低くしろ、と言うシーン。王が座るとアンナも座り、王が寝そべるとアンナも床に寝転がる…。客席から笑いが起きていましたが、これ、現代の私達も日常的にやってることでは?と後から思ったのでした。特にプライドの高い目上の人に対しては、常にその人より下手に出るように気を遣う。何でこんなことしなきゃいけないんだろうと思いながら。同じことを私もしているなあと思いました。

色々書きましたが、渡辺謙大沢たかおがロンドンで堂々とミュージカルを演じて喝采を浴びる姿を観るのは、同じ日本人として感慨深いものがありました。7月の来日公演も楽しみです。

「王様と私」オリジナル・ブロードウェイ・キャスト盤

「王様と私」オリジナル・ブロードウェイ・キャスト盤

 

 



 

パリのアメリカ人(劇団四季)

観劇日:2019年2月11日

劇場:東急シアターオーブ(渋谷)

上演時間:2時間50分 ※途中休憩あり

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1951年のミュージカル映画を、少しストーリーを変えて舞台化したもの。

歌よりダンスの割合が多くて、以前観たマシューボーンのシンデレラに少し歌が加わった、くらいの感じ。生オケじゃないのが残念でした(四季は財政難で生オケを廃止したそうですね)。

2015年にトニー賞で振付賞を含む4部門受賞しているそうです。

【あらすじ】

舞台は第二次世界大戦後のパリ。退役軍人のジェリーは、アメリカに帰らず、パリで画家を目指すことにした。彼はたまたま出逢った踊り子のリズに一目惚れする。ジェリーの猛アタックにより、2人は頻繁に会うようになるが、ジェリーの友人で作曲家のアダムもリズに好意を持ち、繊維会社の御曹司アンリもリズと親しい仲で、後に婚約する。さらにジェリーは、彼に好意を持つアメリカ人女性のマイロから、パトロンになる話を持ちかけられ…。

【ネタバレを含む感想】

映画よりリズが可愛くて、踊りもしなやかで美しかったです。ジェリーも見事な踊りで、キャラクターにも好感が持てました。

戦争の爪痕がより色濃く描かれていて、ナチスの話や、戦時中の体験、レジスタンスの話などが出てきました(映画でそれにほとんど触れなかったのは、終戦後間もなくて、まだ生々しすぎたのだなと思いました)。

作曲家アダム役の俵和也がチャーミング。アダムは足の悪い役なのだけど、想像上のラジオシティシーンで軽快なダンスを披露していました。「But Not For Me」のソロにも心打たれました。

ジェリーのパトロンであるマイロ役の岡村美南は声量があって存在感もあり、カーテンコールでひときわ大きな拍手をもらっていました。リズの婚約者アンリは映画より見せ場が多く、彼の両親もいい味を出していました。

舞台オリジナルの新作バレエシーンは少し長く感じました。それより最後のリズとジェリーの喜びのダンスがもっと長くてもいいんじゃないかなと思いました。

歌も踊りも危なげなくて、安心して見ていられましたが、歌はガーシュウィンのリズミカルな感じがもっと欲しい気もしました。どちらかというと「きれいな合唱」という印象でした。

リズは3人の男性それぞれに思わせぶりな態度をとるなと思わないでもなかったけれど、最後にジェリーの腕に飛び込むシーンは胸が熱くなりました。そんなわけで、鑑賞後は満足でした。

パリのアメリカ人

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  • アーティスト: オリジナル・ブロードウェイ・キャスト・レコーディング
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画狂人北斎

観劇日:2019年1月15日

劇場:新国立劇場

上映時間:120分(休憩なし)

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90歳でこの世を去る時に「天があと5年の間、命保つことを私に許されたなら、必ずやまさに本物といえる画工になり得たであろう」と言ったという葛飾北斎に興味を引かれ、ミュージカル「生きる」でも感銘を受けた宮本亜門演出ということで、今回の観劇を決めました。現代と江戸時代を行き来し、時に両者が交わる演出に戸惑うこともありましたが、観終わった後はズシンと心にのしかかるものが。何と言っても一番は北斎の絵の迫力。あんな恐いプロジェクションマッピングは初めて見ました。

【以下、ネタバレを含むあらすじ】

舞台の始まりは現代。美術館で企画講演を行う北斎の研究家とその後輩である凛太が登場。凛太はかつて画家を志し、賞を取ったこともあったけれど訳あって絵を描くことをやめてしまった様子。

観客が講演会の聴衆役にされてしまうのも面白かったし(最近の流行りかなと思いますが)、北斎が数理学的な理論を使い、コンパスや定規を使って計算し尽くされた絵を描いていたという説明も勉強になりました。ドビュッシーにまで影響を与えていたとは。

続いて江戸時代のシーンへ。ゴミの散らかった部屋で絵を描いている北斎と、娘のおえい。そこにろくでもない孫や、戯作者の種彦がやって来たりするのですが、正直このあたりは少し冗長な印象。

盛り上がるのは、北斎が身を隠した小布施で死体の解剖を目の当たりにするところ。ふわふわした子宮をイメージした舞台美術も美しいです。

キリシタン禁制の当時、箸に見せかけて描かれた十字架の絵や、改革後の日本を予言した見立て絵も興味深かった。

凛太が恋人を津波で亡くす回想シーンの、北斎の絵を使ったプロジェクションマッピングは本当に恐ろしくて、これは被災された方は見られないのではないかと思いました。

北斎が子どもの頃から「見られている」と恐れていた「目」に、実はありのままで受け入れられていると気づくシーンも印象的でした。宇宙の奥義、と言い表わされていましたが、シーボルト等の西洋人を通してキリスト教にも触れていた彼なりの神観なのかなと。でも、その目を描いたものとして、プロジェクションマッピングで使われた最晩年の鳳凰の絵は本当に恐ろしくて、思わず目をそらしてしまったくらいです。

いくら世間に評価されても「自分は偽物しか描けていない」と落胆し、禁書だった舶来の解剖図を見て感嘆し、本物の死体解剖を見て「そうだったのかあ!」と驚喜する北斎。本当に人の評価ではなく、自分の納得する道を邁進した人だったのだなと思いました。人目線でなく自分の価値観で生きるってどういことだろうと考えさせられる作品でした。

舞台を観た後に見つけた下のページですが、北斎がいかに苦労して「神奈川沖浪裏」にたどり着いたかがわかります。劇中にも「天才と簡単に言うな」というセリフがありました。

 

 

北斎決定版 (別冊太陽 日本のこころ)

北斎決定版 (別冊太陽 日本のこころ)