仕事が嫌になったからブロードウェイでミュージカル観てくる

Nothing is as beautiful as something that you don’t expect.

名曲ピックアップ18夏:A Hymn to Him(My Fair Lady)

My Fair Ladyは1956年初演なので、18夏というのはどうかとも思いましたが、今上演されてるので。

トランシルベニア大使館での社交界デビュー大成功の後に家出したイライザについて、ヒギンズ教授が「なぜ女は男のようになれないのか?」と怒りをぶちまける歌。こちらは初代ヒギンズのレックス・ハリソン版。

Hymn to Him (From

Hymn to Him (From "My Fair Lady")

  • Rex Harrison
  • ミュージカル
  • ¥250

まあ、偏見に満ちまくった内容です。実際に舞台を観た時は、観客の中で怒る人がいるんじゃないかなとちょっとドキドキしてしまったほど。だけど何だかとても気持ちよさそうに歌ってるし、音楽も勇ましくコミカルなので、ついクスリと笑ってしまう、不思議な魅力を持った曲です。

私が特に好きなのは、ここ。

They're nothing but exasperating, irritating,
vacillating, calculating, agitating,
Maddening and infuriating hags!

"女はしゃくにさわる、イライラさせる、優柔不断な、計算高い、やきもきさせる、気を狂わせる、腹立たしい魔女だ!"

ingで終わる罵詈雑言が7つも並んで、ここまでくると爽快です。

ピカリング大佐との掛け合いも楽しい。ヒギンズが「君は僕が何時間か話さなかったら無視するか?」「花を贈らなかったら傷つくか?」「誕生日を忘れたら大騒ぎするか?」と問うと、大佐は「 もちろんしない!」「くだらない!」「絶対しない!」とテンポよく答える。勢いづいたヒギンズは「なんで女は、俺たちみたいになれないんだ!」と叫ぶ。

さらに、ベテラン家政婦のピアスさんにまで「ピアスさん、あなたは女性だ。なぜ女性は…?」と続ける無神経さも、笑ってしまいます。ピアスさんは映画でも舞台でも後ろ姿なので、反応がわからないのですが、憮然とした表情が容易に想像できます。

作詞のアラン・ジェイ・ラーナー、作曲のアンドレ・プレビン、そして初代ヒギンズのレックス・ハリソンはみんな複数回結婚・離婚を繰り返しているそうで(ラーナーは8回!)、この歌はそんな彼らの本音が炸裂しているのかもしれません。

今回のリバイバル上演でヒギンズを演じたハリー・ハッデンペイトンはインタビューの中で「歌いにくい内容では?」と聞かれ、「確かにそうだけど、ヒギンズが自分の信じてきたことをひっくり返される前に、まず彼の凝り固まった考えを強く詳しく述べる必要があるんだ」と答えています。

ヒギンズが映画より若いのも、イライザとの対等な立場を表すためで、実際バーナードショーの原作では、40歳くらいの設定なのだそう。

レックス・ハリソンのしゃべり歌いは、あまり歌が得意でなかったための苦肉の策だったようですが、リズミカルで勢いがあって引き込まれます。そのスタイルを見事に踏襲し、かつ新しい魅力のヒギンズを生み出したハリー・ハッデンペイトンを観ることができたのが、今回の「My Fair Lady」での一番の収穫でした。