仕事が嫌になったからブロードウェイでミュージカル観てくる

映像業界経験のある事務職員。観劇への情熱だけが残っています。

ケリー・オハラ出演「コジ・ファン・トゥッテ」(METライブビューイング)

鑑賞日:2018年9月17日

映画館:東京劇場

 「王様と私」で渡辺謙と共演中のケリー・オハラが出演したオペラ「コジ・ファン・トゥッテ」。時代設定が現代に変更され、サーカス(グレイテスト・ショーマン風)や遊園地のセットも絡めた新演出でした。2018年3月31日上演の録画。

ある劇評によると、メトロポリタン歌劇場のオペラは、いつも半分ブロードウェイミュージカル風だそうで、私のようなミュージカル好きオペラ初心者にはちょうどよかったです。

【あらすじ】舞台は1950年代のコニーアイランド。フィオルディリージとドラベッラの姉妹は、それぞれ青年士官のグリエルモ、フェルランドと恋人同士だった。ある日、「女性は必ず心変わりをする」と主張する哲学者ドン・アルフォンソと2人の青年は、自分達の恋人が貞節を守るか賭けをすることになったのだが…。(あらすじ終わり)

18世紀末のナポリという原作の設定がちょっと前の現代に変更されていて、ぐっと身近な雰囲気。

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(舞台になったニューヨーク ブルックリンのコニーアイランドは実際はこんな感じ)

1幕ではシンプルなニットにタイトスカートという職場にもいそうな格好の姉妹が、オペラを朗々と歌うのが新鮮でした。

幕間のインタビューでも指摘されているとおり、設定に多少無理があって、1幕は観ながら居心地の悪さを感じました。哲学者のアルフォンソはなんで若い恋人達の仲を裂こうとするんだろう、とか、青年士官達が自分の恋人の姉(または妹)を口説くモチベーションは?など色々とはてなマークが頭に浮かびました。

とても心に響いたのが、融通がきかない感じの姉フィオルディリージが2幕で歌うアリア「わが恋人よ、許してください」。必死に婚約者を裏切るまいとする気持ちが伝わってきました。遊園地の熱気球で上がっていく演出も幻想的。

一方妹のドラベッラは比較的簡単に他の男に落ちてしまいます。自分の恋人が裏切ったと知って怒りに震える青年グリエルモ(そもそもこんな嘘を仕掛ける方が悪いのに)が、それでも恋人を愛することをやめられない、と歌うシーンも良かったです。

ケリー・オハラは女中のデスピーナ役。他のキャストに比べてミュージカル風なのが良いアクセントになっていました。彼女の仮装も楽しく、最後の結婚式の公証人の衣装はグリーンで「夏の夜の夢」のパックのような出で立ち。狂言回しの役ですしね。

全編通して突っ込みたくなるところは多々あるのですが、最後の大団円では「相手を美化するのではなく、弱さも知った上で結婚ってことかもね」となんだか納得させられてしまいました。何よりもモーツァルトの素晴らしい音楽を堪能できて、フィナーレは満足感で一杯でした。

モーツァルトを聴くと免疫力が高まるとか、野菜がよく育つとか言われますが、3時間半どっぷり聴き続けた結果、確かに心身がすっきりして元気になりました。前回のプッチーニではなかったことです。モーツァルト恐るべし。

本編とは関係ありませんが、幕間でメトロポリタン歌劇場の新音楽監督ヤニック・ネゼ=セガンが紹介されるコーナーがありました。オケ側からみた彼の指揮の動画が流れたのですが、鬼気迫るものがあり、これまた貴重なものが見られました。