仕事が嫌になったからブロードウェイでミュージカル観てくる

映像業界経験のある事務職員。観劇への情熱だけが残っています。

世界を狙う日本発ミュージカル:「生きる」初日(TBS赤坂ACTシアター)

観劇日:2018年10月8日

劇場:TBS赤坂ACTシアター

公演時間:2時間15分(休憩有)

名作誕生の瞬間に図らずも立ち会ってしまった、そんな気持ちです。期待の斜め上を行く感動を体験しました。

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【あらすじ】市役所の市民課課長、渡辺勘治は定年間近。同じ時間に起き、同じ朝食を食べ、同じ時間に出勤して帰る代わり映えのしない日々を送っていた。ところがある日、自分が胃癌で余命わずかだと悟り…。(あらすじ終わり)

ホリプロは今年のトニー賞受賞作「The Band's Visit」に出資をしていて、「メリー・ポピンズ」日本プロダクションもとても見応えがあったので、ここのところ注目していました。マシューボーンの「シンデレラ」もそうですね。日本オリジナル・ミュージカルということで、応援したい気持ちもあって観劇。

演出は宮本亜門。音楽はキャロル・キングのミュージカル「Beautiful」のジェイソン・ハウランド。サウンドデザインは、ファン・ホームやThe Band's Visitにも携わっていたヒロ・イイダ。

公式サイトに企画段階からの詳細が記されています。俳優とのワークショップをしながら本を練っていく方法も取り入れられたそう。

(以下ネタバレ有り感想)

冒頭のコーラスシーンで「あ、この作品当たりだ」と思いました。事前に公式動画を聴いた時は、正直ディズニーの日本語吹替版みたいな不自然さを感じて「うーん」という感想だったのですが、生で聴くとかなり自然でした。

場面転換もテンポ良くスムーズで、地味になりそうな市役所のシーンも机が動いたりして飽きさせない演出。自分の病を悟った勘治が小説家に連れて行かれる夜の街のシーンは華やかで楽しめます。

市村正親は、ずいぶん昔にクリスマスキャロルで観たことがあって「歌って踊れる俺を見て!」というタイプの役者さんだと思っていたのですが、今回はいい意味で裏切られました。1幕はとにかく目立たずほとんど喋らず、ひたすら振り回されるだけ。1幕の最後でようやくパワー放出、本領発揮という感じでニヤリとしました(2階の女子学生達が持ってくるバースデーケーキも◯)。

2幕目はお葬式シーンからの息子と小説家のやりとりなど、一部中だるみを感じることもありましたが、圧巻はかの有名なブランコシーン。彼は何も派手なことはしてない。ただ恐れおののいて戸惑って、引きずり回されて、でも最後の力を振り絞って信念を貫いて。それがあのシーンに集約されていて、泣けて仕方ありませんでした。最初からこのシーンに来るとわかってたのに。ブランコに乗って座ってるだけなのに。市村正親をこんな使い方するなんて。宮本亜門恐るべしです。黒澤映画のエッセンスが抽出されたこの静的な感動は、紛れもなく日本オリジナルだと思いました。

今までブロードウェイを3度訪問して「このクオリティは日本では体験できない」と信じていましたが、思いのほか近くで宝を発見した思いです。一部マイクにノイズが入ったり、オフマイクになって歌詞が聞き取り辛いところもありましたが、でもこれは世界に行くんじゃないかな、と思いました。実際、世界進出を意識しているため、今回は東京だけで、地方公演は行われないとか。

東京での初演を初日に観たのは貴重だったと思える日が来るかもしれない。そんなことを感じた1日でした。

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