夜中に犬に起こった奇妙な事件(NTLive)
鑑賞日:2019年1月5日
映画館:シネ・リーブル池袋
もともとマーク・ハッドンの原作のファンで、ナショナルシアターライブは2回目。プロジェクションマッピングが特徴的な演出ですが、何よりも登場人物それぞれの感情が丁寧に描かれていて、心に迫ってきました。改めて傑作だなと思います。
【あらすじ】
15歳のクリストファーは、近所のシアーズ夫人の飼い犬ウェリントンが、園芸用の大きなフォークで殺されているのを発見する。人に触られるのが苦手な彼は、職務質問を受けている途中でパニックに陥って警察官を殴り、警察に保護されてしまう。
一時は犯人だとも疑われた彼は、真犯人を探そうと、近所の聴き取り調査を開始するが…。
【以下、ネタバレを含む感想】
原作小説を読んだ時も、1回目のナショナルシアターライブを観た時も、クリストファー目線でストーリーを追っていたのですが、今回は両親の気持ちが痛いほど伝わってきました。ことさらに感動を煽るようなことはしてないのに、なぜかじわじわ泣けるシーンのオンパレード。
特に父親は、自閉症のクリストファーを心から愛していて、忍耐強く我慢強く彼を支えてきたのだなと。その分抑えてきたものがとても大きかったのですね。思わず息子に手を挙げてしまうシーンは本当に切ない。ブチッとクリストファーの心の電源が切れたような効果音が入ります。
母親役の女優さんは、不思議な温かさのある人で、思い出や手紙のシーンで彼女が登場すると、場の雰囲気がほっと和む感じがしました。クリスマスの買い物の話から、宇宙飛行士になったクリストファーを「私の息子よ!」と言う夢のところは、いつも涙が。彼女はクリストファーを置いて逃げてしまったけど、ロンドンでの着替えを手伝うシーンなどから、本当に彼を愛しているということが、ひしひしと伝わってきました。
人に触れられることを嫌うクリストファーに対して、両親がそれぞれ、おずおずと手を彼にかざすシーンもたまりません。父親がゆるしを乞うところで、5分間のキッチンタイマーを使うところも。何でしょうね、家族と愛し合いたいと思っているのに、思うように繋がれない悲しさ、もどかしさが心を打つんでしょうか。
母親からの手紙を発見して、その事実を受け止め切れなかったり、電車の窓から入ってくる溢れる情報を処理し切れないと、気を失い失禁してしまうクリストファー。でもそんな生き辛さを抱えながら、自分なりに情報を集めて分析して、行く先を決めて、実行に移して…。彼の恐れ、混乱、決断に共感し、心動かされました。
クリストファーの担任、シボーヌ先生もとてもいい。最後に「何でもできるってことでしょ?」と聞かれて、彼女が黙って微笑むラストも。
惜しむらくは、試験中にカーテンコール後の話が唐突に出てくるところ。あとは証明シーンであからさまにスポンサー名を出すところは興ざめだなと。
それでも、鑑賞後の満足度はとても高かったし、機会があったらぜひ生で舞台を観たいなと思いました。
The Curious Incident of the Dog in the Night-Time: A Novel (Vintage Open Market)
- 作者: Mark Haddon
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