カラス・アパラタス「ロスト・イン・ダンス」
鑑賞日:2019年8月12日
劇場:カラス・アパラタス(荻窪)
まず、照明に痺れた。ぼおっと浮かび上がる空間に現れた勅使川氏を見て、「何だ、この人は!」。無駄のない動きが、不思議な緊張感で場を支配する。ベートーベン、シューベルトのピアノ曲も静謐な空間を創り出す。荻窪ではなく、どこか外国の街に来たかのような錯覚にとらわれた。
共演の佐東利穂子さんの手の動きが、薄暗い照明の中で残像になって円を描いていた。途中、あまりに息遣いが激しくなったので、大丈夫だろうかと心配になった。踊りのボキャブラリーは、勅使川原氏の方が豊富だと感じた。
終演後の挨拶で、勅使川原氏の声が思いのほか高く、か細くて驚いた(写真から、もっと押しの強い人だと思っていた)。ひとつひとつの言葉の純度が高くて、このトークも含めて作品が完成するのだと思った。ホールの外で観客に挨拶する彼は、まるで少年のような表情で、瑞々しいにも程がある65歳だった。
10月には東京バレエ団で新作も披露されるそうで、こちらもぜひ観てみたい。