「リチャード二世」(新国立劇場)
観劇日:2020年10月23日
劇場:新国立劇場中劇場
戯曲を読んだり、ホロウ・クラウンでベン・ウィショー版をちらっと見たりしたことがあったけど、ひ弱な王様の話という印象で、あまり惹かれる演目ではありませんでした。でも鵜山仁演出だし、評判もいいようなので、急遽当日券で観劇。とても良かった。
【以下、ネタバレを含む感想】
舞台美術や衣装がとても素敵で、登場人物が舞台に現れた途端、劇場が異空間になりました。
リチャード役の岡本健一がとても魅力的。冒頭のシーンでトマス・モーブレーと相対する姿、美しかった。台詞のひとつひとつや相手役へのリアクションに途切れることのない一貫性を感じました。後半、虚飾が剥ぎ取られた後に浮かび上がってくる人格のきらめきが、よく表れていたと思います。最後の殺陣のシーンはかっこよかったなあ。
対するボリングブルックは、本当は何を考えているのかわからなかった。いつ王位を奪い取ることを決めたのだろう、リチャードのこと尊重してるように見えるし、でも「ロンドン塔へ!」と急に叫んだりするし。最後までつかみ所のない存在でした。
脇を固める役者さん達が強者揃いで、とても贅沢な舞台でした。特にヨーク公役の方、仲代達矢みたいな迫力で、コメディもお上手。横田栄司さんというんですね。ボリングブルックの父ゴーントの臨終のシーンもすごかった。
こんなご時世なので、お芝居に行ったことをあまり大きな声で言えない雰囲気があったり、自分が感染したら職場で責められるかなあなどと不安もよぎりましたが、こんな状況だからこそ役者さん達の命をかけた演技が見られるのは、本当に貴重だという気がします。芸術って人が生きていく上で必要不可欠なものなのだと、ひしひしと感じました。
こちらは、10代目ドクター・フーのデビッド・テナント版。観てみたい。