仕事が嫌になったからブロードウェイでミュージカル観てくる

Nothing is as beautiful as something that you don’t expect.

王様と私(TOHOシネマズ日比谷プレミア上映)

鑑賞日:2019年2月22日

映画館:TOHOシネマズ日比谷

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(写真を撮り忘れたので、タイのイメージ画像。こんなシーンも出てきます)

子どもの頃、テレビでユル・ブリンナー版の映画を観たときは、デボラ・カー演じるアンナの美しさ聡明さ(と広がるスカート)に感銘を受けました。それ以来Shall We Danceは大好きな曲です。音楽はロジャース&ハマースタイン。タイでは、不敬罪にあたるという理由で、上映禁止なのだとか。

今回観たのは、ニューヨークのリンカーンセンターカンパニーの2018年ロンドン公演録画でした。

【あらすじ】

時は1860年代、アンナはシンガポール領事館からの依頼で、シャム国王の妻子の家庭教師を引き受けることになった。約束されていたはずの家が与えられず、王に抗議するアンナだったが、愛らしい子供達に教えることにやり甲斐を感じ、子供達や王の妻達もアンナを慕うようになった。そして王自身もアンナに一目おいていた。

ある日、イギリスからの公使がシャムを訪れることに。シャムが野蛮な国と思われて保護国にされることを王は恐れ、悩んでいた。王から使用人扱いを受けて腹を立てていたアンナだったが、チャン王妃の促しもあり、ヨーロッパ様式で大使をもてなすことを王に提案するが…。

【以下、ネタバレを含む感想】

渡辺謙の存在感が凄かったです。コミカルな演技で笑いを取ることが多い役なのですが、ふとした瞬間に王の威厳が垣間見られるのはさすがだと思いました。そして表現の引き出しが豊富。改めて優れた役者さんなのだと。首相役の大沢たかおは、やや一本調子ではあったけれど、こちらも貫禄十分でした。かなりふっくらしていたのは役作りなのでしょう。

ケリーオハラのアンナは、歌唱力は言わずもがな包容力と聡明さを兼ね備えた素敵な女性。相手が王であろうとも自分の尊厳を失わず、でも温かさのある態度で、王の信頼を得ていく姿は清々しいものでした。以前METライブで観たコジ・ファン・トゥッテよりもこちらの方が彼女の良さが存分に引き出されている気がしました。

そしてチャン王妃を演じたラシー・アン・マイルズがこれまた素晴らしい。感情を抑えた歌の背後に、王への愛が滲み出ていて。彼女もケリーオハラと共にトニー賞を受賞したのですが、納得です。タプティム役の女優さんもお上手でした。

途中、日本エレキテル連合みたいな人達が出て来る劇中劇では眠くなりましたが、クライマックスの「Shall We Dance」のシーンは、やはり心踊るものがありました。王様の前なのに昔のロマンスを思い出して思わず1人で踊ってしまうアンナは、けっこう天然というか、夢見がちでロマンチストな面もあるんだなと思いました。

問題になる差別的な描写ですが、特に床に伏して礼をする作法について、アンナが「カエルみたい。あんなことはしたくない」と歌うところは、ちょっと戸惑いました。日本でも同様の作法があるので、ラストで新しく王になる息子が、それを禁ずるところも、スッキリしない感じはありました。

印象的だったのは、王がアンナに、必ず自分より頭の位置を低くしろ、と言うシーン。王が座るとアンナも座り、王が寝そべるとアンナも床に寝転がる…。客席から笑いが起きていましたが、これ、現代の私達も日常的にやってることでは?と後から思ったのでした。特にプライドの高い目上の人に対しては、常にその人より下手に出るように気を遣う。何でこんなことしなきゃいけないんだろうと思いながら。同じことを私もしているなあと思いました。

色々書きましたが、渡辺謙大沢たかおがロンドンで堂々とミュージカルを演じて喝采を浴びる姿を観るのは、同じ日本人として感慨深いものがありました。7月の来日公演も楽しみです。

「王様と私」オリジナル・ブロードウェイ・キャスト盤

「王様と私」オリジナル・ブロードウェイ・キャスト盤