ハニーボーイ
鑑賞日:2020年8月7日
映画館:アップリンク吉祥寺
前情報を何も入れず、ふらりと入って観ました。後からじわじわくる作品。
【あらすじ】
1980年代、天才子役としてテレビで活躍していたオーティス。しかし実生活では両親は離婚、オーティスの収入で父子家庭は支えられていた。
10年後、成人した彼は俳優を続けていたが、アルコールで暴力事件を起こし、リハビリ施設に入る。それを機にオーティスは、直視することを避けていた父との関係に向き合い始める。
【以下、ネタバレを含む感想】
ストーリーとしては、よくあるトラウマもので、最後に父親の幻影と抱き合うところも特に感慨もなく見ていた。ラストも「まさかここで終わるの?」と拍子抜けしたが、エンドロールの写真を見て、これが実話なのだとわかった。
その後作品HPで、オーティスのモデルであるシャイア・ラブーフが脚本を書き、しかも自身を虐待した父親役を演じたと知り、衝撃を受けた。そう考えると、一つ一つのシーンがまったく違って見えてくる。
一番印象に残ったのは、父のジェームスが、最初は抵抗していた断酒会で自分のことを語り始めるシーン。いつも虚勢を張っている彼の、鎧を脱いだような様子がなんとも清らかで、この役者さんは本当にいい表情をするなと、背景も知らずに思っていた。
シャイア・ラブーフはまだ30代だから、父親は生きている。どんな思いでこの映画を観たのだろう。自分がちゃんと父として愛せず、親としての責任を果たせなかったにもかかわらず、息子が映画で自分を演じることで、最大限自分を理解しようとし、寄り添ってくれたと感じただろうか。
インタビューで、シャイアは、この映画がきっかけで父との関係が好転した(ほかの親子関係のように多少ごちゃごちゃはしているけれど)と述べている。
シャイア・ラブーフはこの作品まるごとかけて、父親を抱きしめたのだと思った。
子役のノア・ジュプくんがとてもいい。この瑞々しさを失わないで大人になってほしい。