人形の家 part2
観劇日:2019年8月17日
劇場:紀伊国屋サザンシアター
2017年に書かれた、イプセン「人形の家」の続編。同年のトニー賞で作品賞、主演男優賞、主演女優賞を含む8部門にノミネートされ、ローリー・マトカーフ(ビッグ・バン・セオリーのシェルダンのママ)が主演女優賞を受賞しています。今回、主役のノラ役は永作博美で、演出は栗山民也。
夫トルヴァル役の山崎一が、一番台詞に血が通っているように感じました。終始緊迫した雰囲気の中で、彼が話すとほっとするような気もしました。最後は、彼が随分ノラに歩み寄って、理解しようと努力しているので、個人的には「え、まだ駄目なの、ノラ?」と思う面が無きにしもあらずでした。フェミニスト・アイコンとなったノラの基準からすると、私はまだまだ甘いという事でしょうか。
ノラ役の永作博美は、乳母や夫、娘との会話の中で常に葛藤して悲痛な表情を浮かべていたので(特に娘との対決はヒリヒリしたものでした)、その空気が全体を支配していて、観終わった後は、考えさせられるシリアスなお芝居だな、という感想でした。
ところがブロードウェイ版の抜粋シーンをYouTubeで見ると、ノラはもっと堂々としていて、図々しく、夫とのやりとりも丁々発止。乳母のアンネ・マリーもFワードを叫んだりして、客席から笑いが起き、まるでコメディ。雰囲気の違いに驚きました。国の文化の違いも影響しているのかもしれません。
脚本のルーカス・ナスはイプセンのファンで、「人形の家」を自分の言葉で書き直した結果、これは本当の意味でコミュニケーションが取れなかった2人の物語だと思い、彼らが改めて話し合う必要があるところに続編を作る意味を見出したそうです。
イケメンなナス氏、ヴォーグ誌にも取り上げられています。
私がノラの台詞で一番共感したのは、自分の中に聞こえて来る他者の声が消えるまで2年間の沈黙が必要だった、そうして初めて自分の声が聞こえるようになった、というところ。結婚などに関する彼女の主張に100%賛同は出来なかったけれど、最後にまた扉を開けて出て行く決断が、彼女にとっての最善なのだと納得する事はできました。
それにしても、残されたトルヴァルはかわいそうでした。カーテンコールで山崎さんの目が赤くなっていて、まだ役の余韻が残っている感じもして、ちょっとたまらない気持ちになりました。
↓雑誌『悲劇喜劇』で日本語訳戯曲も読めるようです。
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