「ストックホルムでワルツを」でビル・エバンスを演じたピアニストが来日中
ジャズを母国語で歌ったスウェーデンの歌手モニカ・ゼタールンドの伝記映画「ストックホルムでワルツを」。
モニカがかなり勝手な女性として描かれていて、個人的にはあまり共感できなかったのですが、それを打ち消してあまりある演奏シーンがいくつかありました。
一番のハイライトは、名曲「ワルツ・フォー・デビー」でのモニカとビル・エバンスの共演。それまでのモヤモヤが一気に解消されるような名シーンでした。そこでビル・エバンスを演じたピアニストがランディ・イングラム。ビル・エバンスにしては少しふっくらしてるかなと思いましたが、音色は雰囲気がよく出ていました。
(本物のビル・エバンスはこんな感じ。このアルバムは彼の初リーダー作です)
ランディ・イングラムは現在、ベースのマット・ブリューワーとのデュオツアーで来日中です。既にいくつかのコンサートは終わっていますが、今後のスケジュールとしては、9月29日に東京・南青山のBody & Soulでライブが行われるようです。
こちらはモニカとビル・エバンスの共演アルバム。映画で彼女を演じていたエッダ・マグナソンとよく似てますね。
- アーティスト: モニカ・ゼタールンド・ウィズ・ビル・エヴァンス,モニカ・ゼタールンド,ビル・エヴァンス,チャック・イスラエルズ,ラリー・バンカー
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「ミス・シャーロック」海外の評判とLong Long Man
HuluとHBO Asiaの共同製作ドラマ「ミス・シャーロック」。アジアの19の国や地域で日本と同日放送され、9月1日からはアメリカのケーブルテレビ局HBOでも放送開始になりました。一部のメディアで取り上げられていますが、おおむね好意的に受け止められているようです。
私も全話観ました。特に最後の3話は予想を超えたクオリティの高さで、一気見してしまいました。竹内結子恐るべしです。
ツイッターでも、一部の熱心なファンがファンアートをアップしたり、#watolockなるハッシュタグができたり、早くも続編をhuluのアカウントに催促している人もいます。
面白いのが、シャーロックの兄を演じる小澤征悦を「 Long Long Manだ!」と言っている人が何人かいること。海外では、彼はこのCMで有名なようなのです。
これはUHA味覚糖「さけるグミ」のコマーシャルですが、以前からネットで話題になっていたようで、なんと世界3大広告賞の1つ、カンヌライオンズでフィルム部門シルバー賞を受賞したそうです。
ドラマにしろCMにしろ、日本の作品が世界に発信されるのはいいことですね。
ノベライズやDVDも発売されているようです。
- 作者: 丸茂周,小谷暢亮,政池洋佑,及川真実,森淳一,木犀あこ
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2018/06/19
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イディッシュ語版「屋根の上のヴァイオリン弾き」オフ・ブロードウェイで好評
日本でも繰り返し上演されている「屋根の上のヴァイオリン弾き」。その原作言語イディッシュ語での上演がオフ・ブロードウェイで話題になっています。
原作は、ショレム・アレイヘムがイディッシュ語で書いた小説「牛乳屋テヴィエ」。今回は、1965年のイスラエル以来、53年ぶりに原作が書かれた言語での上演となりました。
イディッシュ語とは、元は中欧・東欧系のユダヤ人によって使われていた言葉で、現在はイスラエルをはじめ世界中のユダヤ人に使用されているのだそう。
yotubeに動画が上がっていましたが、原作の言語ならではの生き生きとした勢いが感じられました。今回キャスティングされた俳優達はイディッシュ語を話せない人がほとんどで、開演までの準備期間はわずか1ヶ月だったそうです。
好評のため何度か上演期間が延長され、今のところ国立イディッシュ劇場で11月8日まで上演の予定ですが、ロングランになったら是非観てみたい作品です。
(追記:その後好評のため上演期間が12月30日まで延長されました)
イディッシュ文学も調べたら面白そう。
こちらに1965年イスラエル・テルアビブ・キャストのCDもありました。
シャーロック妹役のシャーン・ブルック主演舞台「I'm Not Running」
BBCドラマ「シャーロック」でカンバーバッチの妹を演じたシャーン・ブルック。彼女の主演舞台「I'm Not Running」のプレビュー公演が、ロンドンのナショナルシアター リトルトン劇場で10月2日から始まるそうです。脚本は「スカイライト」のデヴィッド・ヘア。
元彼と共に政治の世界に足を踏み入れる医師の話。シャーン・ブルックは実際に政治家の話を聞いて役作りをしたそうです。共演は「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」のジョシュア・マグワイア他。
イギリスでは、ナショナルシアターライブで来年1月に上映されるそうなので、日本にも来ることを期待したいと思います。
このシーズン4では、ブルックがシャーロックを振り回す恐ろしい妹ユーラスを演じていました。ユーラスは複数の人物に扮するという設定でしたが、見事に全員別人に見えたので、種明かしされるまで全く気づかず。すごい女優さんです。
I'm Not Running (English Edition)
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NTLive「イェルマ」+トークイベント(プレミアボックスシート)
鑑賞日:2018年9月19日
映画館:TOHOシネマズ日本橋
上演時間:1時間49分(休憩なし)
「ドクター・フー」のコンパニオン、ローズ役で有名なビリー・パイパーが熱演。今回ナショナルシアターライブで上映の「イェルマ」はスペインの詩人/劇作家フェデリコ・ガルシーア・ロルカの脚本を、演出のサイモン・ストーンが現代に置き換えて翻案したものだそう。2017年オリヴィエ賞最優秀リバイバル賞他受賞。
【あらすじ】ブログを書いて収入を得ている「彼女」はパートナーのジョンと一緒に住んでいる。30代を過ぎて子供を望むがなかなか思うようにいかない。しかし子供を望まない姉が妊娠をしたと聞いて嫉妬の思いに苦しめられ…。
【感想】子どもが欲しくて欲しくてたまらなくて、それがないと他の何があっても幸せになれず、精神が崩壊していく人の話。妊娠を望む望まないに関わらず、女性はあのくらいの年齢になると、自分の中に生まれるひそかな狂気を持て余すことが多いのではないかと思いました。老いていくことに対する不安、元彼を未練がましく思い出したりする心の揺れなどいちいちリアル。
旦那はかなり忍耐強く彼女に付き合って、最後まで心にグッとくる言葉をはく。正直、もっと早く去ってもいいくらい。
かなり細切れに区切られてテロップが頻繁に入るのは、今のテレビドラマっぽいなと思いました。
ハッピーエンドではないけれど、最後は不思議なカタルシスがある作品でした。いつも思うことですが、あんな激しい演技をしていた人が、カーテンコールでは笑顔で挨拶するギャップが面白い。
終映後の小川絵梨子さん、谷賢一さんのトークイベントでは、エンディングが原作から変わったこと、俳優とのワークショップを経て脚本が作られたこと、場面転換や舞台装置のことなど、ライターさんや作り手側からの情報・感想を聞くことができて、興味深かったです。
ちなみに今回は初めてプレミアボックスシートを体験。想像以上に快適でした。
鑑賞中に隣の席が気になるタイプの人にはおすすめです。個室感大。
NTLive「イェルマ」はTOHOシネマズ日本橋で10月4日まで。11月2日からは吉祥寺オデヲンでの上映も予定されています。
ビリー・パイパーの代表作「ドクター・フー」は、第一話がこちらで無料視聴可↓
(hulu)
- 作者: ガルシーアロルカ,Federico Garc´ia Lorca,牛島信明
- 出版社/メーカー: 岩波書店
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ケリー・オハラ出演「コジ・ファン・トゥッテ」(METライブビューイング)
鑑賞日:2018年9月17日
映画館:東京劇場
「王様と私」で渡辺謙と共演中のケリー・オハラが出演したオペラ「コジ・ファン・トゥッテ」。時代設定が現代に変更され、サーカス(グレイテスト・ショーマン風)や遊園地のセットも絡めた新演出でした。2018年3月31日上演の録画。
ある劇評によると、メトロポリタン歌劇場のオペラは、いつも半分ブロードウェイミュージカル風だそうで、私のようなミュージカル好きオペラ初心者にはちょうどよかったです。
【あらすじ】舞台は1950年代のコニーアイランド。フィオルディリージとドラベッラの姉妹は、それぞれ青年士官のグリエルモ、フェルランドと恋人同士だった。ある日、「女性は必ず心変わりをする」と主張する哲学者ドン・アルフォンソと2人の青年は、自分達の恋人が貞節を守るか賭けをすることになったのだが…。(あらすじ終わり)
18世紀末のナポリという原作の設定がちょっと前の現代に変更されていて、ぐっと身近な雰囲気。
(舞台になったニューヨーク ブルックリンのコニーアイランドは実際はこんな感じ)
1幕ではシンプルなニットにタイトスカートという職場にもいそうな格好の姉妹が、オペラを朗々と歌うのが新鮮でした。
幕間のインタビューでも指摘されているとおり、設定に多少無理があって、1幕は観ながら居心地の悪さを感じました。哲学者のアルフォンソはなんで若い恋人達の仲を裂こうとするんだろう、とか、青年士官達が自分の恋人の姉(または妹)を口説くモチベーションは?など色々とはてなマークが頭に浮かびました。
とても心に響いたのが、融通がきかない感じの姉フィオルディリージが2幕で歌うアリア「わが恋人よ、許してください」。必死に婚約者を裏切るまいとする気持ちが伝わってきました。遊園地の熱気球で上がっていく演出も幻想的。
一方妹のドラベッラは比較的簡単に他の男に落ちてしまいます。自分の恋人が裏切ったと知って怒りに震える青年グリエルモ(そもそもこんな嘘を仕掛ける方が悪いのに)が、それでも恋人を愛することをやめられない、と歌うシーンも良かったです。
ケリー・オハラは女中のデスピーナ役。他のキャストに比べてミュージカル風なのが良いアクセントになっていました。彼女の仮装も楽しく、最後の結婚式の公証人の衣装はグリーンで「夏の夜の夢」のパックのような出で立ち。狂言回しの役ですしね。
全編通して突っ込みたくなるところは多々あるのですが、最後の大団円では「相手を美化するのではなく、弱さも知った上で結婚ってことかもね」となんだか納得させられてしまいました。何よりもモーツァルトの素晴らしい音楽を堪能できて、フィナーレは満足感で一杯でした。
モーツァルトを聴くと免疫力が高まるとか、野菜がよく育つとか言われますが、3時間半どっぷり聴き続けた結果、確かに心身がすっきりして元気になりました。前回のプッチーニではなかったことです。モーツァルト恐るべし。
本編とは関係ありませんが、幕間でメトロポリタン歌劇場の新音楽監督ヤニック・ネゼ=セガンが紹介されるコーナーがありました。オケ側からみた彼の指揮の動画が流れたのですが、鬼気迫るものがあり、これまた貴重なものが見られました。
モーツァルト:歌劇《コジ・ファン・トゥッテ》グラインドボーン音楽祭2006 [DVD]
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男装のジュリー・アンドリュース:ビクター/ビクトリア
「サウンド・オブ・ミュージック」「メリー・ポピンズ」のジュリー・アンドリュースが、なかなか艶っぽく"女装した男性と偽る女性"を演じているのが、この1982年制作映画「ビクター/ビクトリア」。 DVDを買って観ました。演出はジュリーの2人目の夫、ブレイク・エドワーズ。
ジュリーは95年、同作舞台版でブロードウェイに復帰しますが、3年後に喉の手術が原因で歌唱力を失ってしまいます。彼女が4オクターブの美声を披露した、最後の演目と言えるでしょう。
【あらすじ】1934年のパリ。キャバレー芸人の中年ゲイ、トディは若い愛人に邪険にされ、店もクビになる。売れないソプラノ歌手ビクトリアもまた、空腹のあまり、レストランで無銭飲食を企むまでに追い詰められていた。
トディはビクトリアをポーランド出身の「女装した男性」ビクター伯爵として売り出すことを思いつく。瞬く間にビクターはパリのスターとなるが、ショーを観ていたクラブのオーナー、キングがビクターに恋をしてしまい…。(あらすじ終わり)
「サウンド・オブ・ミュージック」であのピュアなマリアを演じたジュリー・アンドリュースが、「肉団子のために(ホテル支配人と)寝る」と言ったり、レストランでゴキブリをサラダに入れて店にいちゃもんをつけたりします。しかし彼女の上品さがどうしても残ってしまって、もっと振り切れたところを見たい気もしました。
ジュリーの男装はとても様になっていて、「ル・ジャズ・ホット」をはじめとするショーシーンは見応えあり。入浴シーンで見せる背中には筋肉が程よくついていて、かっこいいです。
ロバート・プレストン演じるゲイのトディには母親のような包容力が感じられました。ビクトリアとトディが一緒に歌うシーンは息もぴったり。ホテルでの2人のやりとりも、家族のようなあたたかさがあって、ほっこりします。
ビクターに一目惚れするキング・マーシャルは、ポチャッとしたクラーク・ゲーブルみたいな風貌。ファニー・ガールといい、少し前のミュージカルは、クラーク・ゲーブル風の男性がよく出てきますね。
最後に、ビクターが実は女だとバレそうになった時にトディが一肌脱ぐところは、コミカルかつ心温まるシーンではありますが、やはりジュリー・アンドリュースが上品すぎる終わり方になっていて、もうひと掘り下げあってもいいのにと思いました。演出をした旦那さんが遠慮したのかな、と想像してしまいます。
ジュリー・アンドリュースは現在82歳。自身で演出した舞台版マイフェアレディがオーストラリアで上演されたりして(ブロードウェイ上演中のものとは別バージョン)、お元気のようです。