パターソン
鑑賞日:2019年1月14日
映画館:アップリンク吉祥寺
「沈黙」から注目していたアダム・ドライバー主演ということで、観たい観たいと思っていながら延び延びになっていたのが、ようやく念願叶って映画館で観ることができました。鑑賞後、深い満足感に満たされています。
【あらすじ】
ニュージャージー州パターソンに住むパターソンという名のバス運転手は、毎朝6時過ぎに目覚め、まだベッドで寝ている妻のローラにキスをして、朝食にシリアルを食べ、仕事へ行き、詩を推敲し、帰宅後は犬の散歩に行き、途中で行きつけのバーに寄ってビールを一杯飲む。同じことの繰り返しのようで少しずつ変化のある毎日を彼は慈しんでいた。しかし、静かな日常の中で彼に一つの喪失が訪れ…。
【以下、ネタバレを含む感想】
"何も起こらない"といくつかのサイトの感想にあったので、退屈だったらどうしようと思って、何となく行きそびれていましたが、それは(私にとっては)杞憂でした。
たしかに何も心かき乱されることは起こらないけど、非日常を味わえて、穏やかな気持ちになれる。ある意味理想的な映画と言えると思います。願わくば常にどこかの映画館で上映されていて、嫌なことがあったり、気持ちがせかせかしてて心拍数を下げたい時に観たいような、そんな作品でした。
アダム・ドライバーの奥さんに向ける無防備な笑顔がキュートです。バスの中で詩を考えたり、滝を思い浮かべたりしているところが、何だか禅っぽくて、彼は東洋と相性のいい俳優さんじゃないかと思いました。
同じことの繰り返しを好むパターソンとは対照的なアーティスト気質の妻ローラは、イラン出身のゴルシフテ・ファラハニが演じていましたが、とても美しくセクシー。パターソンは、時に彼女の気まぐれに戸惑いながらも、一途に彼女への想いを詩にうたい続けます。
飼い犬のブルドッグ、マーヴィンもとてもいい味を出しています。演じたのは、もと保護犬のネリー。カンヌでパルム・ドッグ賞も受賞したそうですが、残念ながら映画公開前に亡くなってしまったそうです。クレジットの一番最後でも彼女のことに触れられていました。
最後の最後に永瀬正敏が出てきた時は、唐突な印象もありましたが、同じ日本人として、頑張れ!と応援するような気持ちでした。後で調べたら、監督のジム・ジャームッシュは、永瀬主演の「ミステリートレイン」の監督でもあったのですね。
個人的なツボは、頻繁に出てくる双子と、バーの客の「俺は俳優だ」。パターソンの好きな詩人ウィリアム・カーロス・ウィリアムズのスモモの詩も、すごく可愛かった。
観終わった後、自分のささやかな日常も満ち足りたものに思えるような、そんな映画でした。
- 作者: ウィリアム・カーロスウィリアムズ,William Carlos Williams,沢崎順之助
- 出版社/メーカー: 思潮社
- 発売日: 1994/10
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る