スカイライト(新国立劇場・本公演)
観劇日:2018年12月22日
劇場:新国立劇場
NTLiveを3回観て、シナリオを買った本作。プレビュー公演から20日後の新国立劇場本公演鑑賞でした。
劇場へ向かう際、渋谷の人混みに心折れそうになりましたが、本当に行って良かったです。
【あらすじ】
ロンドンの外れで教師をしているキラ。彼女のアパートを、元不倫相手トムの息子が3年ぶりに訪ねてきて、母親が1年前に無くなったと言う。そして同じ日の夜、トム本人もアパートを訪れる。最初は当たり障りのない話をしている2人だったが…。
【感想】
プレビュー公演ではベッド側から観たので、今回は台所側から。前回は隠れていたキラやトムの表情がよく見えて大満足でした。
エドワードが冒頭では、プレビュー公演よりイラつく奴になっていて、それをさえぎるキラの「やめて!」がとても効いていました。でも「あなたはとてもいい子」とも言ってしまうキラは、日頃からイーストハムの大変な生徒を相手にしているのもあるだろうけど、なんて懐の広い人。
トムはプレビュー公演では、ずっと飄々としていた感じでしたが、本公演ではより生の感情を露わにしていて、2人の応酬がかなり凄いことになってました。キラのソーシャルワーカーのくだりもプレビューより迫力があって、「男性の所有物でない独立した人格」がビシビシ伝わってきました。
途中、トムだけじゃなくて、キラも言ってることおかしいよね?と思う面もあるのに(不倫してアリスを傷つけたのは彼女も同じだから、トムに何か言える立場じゃないのでは、とか)、なぜこのお芝居がこんなに魅力的に思えるのだろうと今回改めて考えたのですが、登場人物があんなにも自分の気持ちを曝け出してぶつかり合う爽快感と、曝け出した後もなお、お互いに対する思いやりや愛情が無くなっていない、というところかなと思います。トムもキラも決定的な価値観の違いで一緒にはいられないわけですが、別の面では弱さや短所を含めて互いのことを本当によく理解していて、そして温かい気持ちがまだ残っている。現実では、あんな言われ方をしたら激昂してもっと早く退出するでしょうから、これはやはりファンタジーだと思うのですが。あんな散々な言われ方をした後になお、「君となら喜んで新しい家族を作るよ」というトムは(色々欠点はあるにしても)器の大きい人だなと思います。
全体的に、本公演の方が、感情のうねりが見えるシーン、場がハッと止まるようなシーンのメリハリが強くなっていたと思います。手紙のことを切々と涙ながらに話すキラのシーンもとても良かった。「愛してるけど、信じられない」というセリフも観る者の心にしっかり届いてきました。
トムが登場してすぐ、ビジネスと銀行の話をするところで、隣のおじさんが深く頷いていて、やっぱり男の人はトムに共感する面があるんだなあと思ったりもしました。
とにかく、観劇後の多幸感半端なかったです。カーテンコールの蒼井優さんの柔らかい笑顔が印象的でした。新国立劇場版は今回が私的千秋楽となりますが、また別の形でぜひ観たい作品です。
それにしても、こんな作品を書いてしまうデビット・ヘアはなんて素敵な人だろうと思います。
雑誌『悲劇喜劇』で日本語訳戯曲も読めるようです。
メアリーの総て(アップリンク吉祥寺)
鑑賞日:2018年12月15日
映画館:アップリンク吉祥寺
上映時間:121分
昨日オープンしたアップリンク吉祥寺での鑑賞。ナショナルシアターライブでベネディクト・カンバーバッチとジョニー・リー・ミラーの「フランケンシュタイン」を観た時に、本編前の解説で原作者が18歳の女性だったと知って興味を持っていました。その作者メアリー・シェリーに関する映画だということで観てみましたが、結果として大当たり。
【あらすじ】
母に死に別れたメアリーは、本屋を営む評論家の父と後妻、彼女の連れ子2人と共に暮らしていた。しかし、実母の墓で怪談小説に読みふけるメアリーと継母はそりが合わず、メアリーは知人のいるスコットランドに預けられる。メアリーはそこで詩人パーシーと出会い…。
【以下、ネタバレを含む感想】
登場人物が多面的に描かれていて、とても良かったです。笑わないエル・ファニングが魅力的。可愛らしい少女のイメージから脱して、成熟した女性を上手に演じていました。
登場シーンでペラペラと詩をまくしたてるパーシーは、ちゃらい男だなと思ったら、案の定色々やらかしてくれます。自由恋愛主義で、いったんはメアリーの手柄を横取りしそうな雰囲気を醸しながらも、最後は成長するのがいいです。
メアリーの義妹クレアが、とてもいい味を出していました。姉のパートナーであるパーシーと何かあった風で、さらにバイロン卿の愛人にもなってしまうのですが、出版前の「フランケンシュタイン」の感想を言うシーンが秀逸。
放蕩の限りを尽くしているバイロン卿もただの破茶滅茶な男ではなく、メアリーの才能を見抜いて励ましたりします。
小説「フランケンシュタイン」は愛を求めながら答えられることのなかった女性が、自身の孤独、喪失を余すことなく注ぎ出した小説だったんですね。でも、この作品を著したことで、彼女はその孤独から一歩踏み出して、夫や父との絆を手に入れたのだと思いました。メアリーの、決して誰のせいにもしない自立した精神には心打たれました。
- 作者: メアリーシェリー,Mary Shelley,小林章夫
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2010/10/13
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オープンしたてのアップリンク吉祥寺は、なかなか居心地が良かったです。お客さんもいい意味で垢抜けすぎてないのがよいですね。会員になろうかな。
クドカン演出「ロミオとジュリエット」
観劇日:2018年12月7日
劇場:本多劇場
上演時間:2時間10分(途中休憩なし)
あえて50代の三宅弘樹をロミオに配役することで、新しい世界観を生み出そうとした宮藤官九郎演出のロミジュリ。皆川猿時、勝地涼、安藤玉恵、田口トモロヲなど、テレビでもお馴染みの役者さん達も多数出演。最後まで笑いの絶えない舞台でした。
【あらすじ】
舞台は14世紀のイタリア・ヴェローナ。モンタギュー家のロミオ(16歳)は、宿敵キャピュレット家のパーティーに忍び込み、ジュリエット(14歳)に一目惚れ。2人は恋に落ち、ロレンス神父のもとで密かに結婚する。しかし、親友マキューシオを殺された怒りから、ロミオはジュリエットの従兄弟ティボルトを殺害し、ヴェローナから追放に。さらにジュリエットも親から縁談を勧められ…。
【以下、ネタバレ有りの感想】
数十年ぶりの本多劇場。相変わらずの渋い空間でしたが、ほぼ満席で注目度の高さが伺えました。ロビーには芸能人もちらほら。
舞台の上には、おもちゃの積み木でできたようなお城。ロミオも童話に出てきそうなちょうちんブルマ姿におかっぱの金髪でした。
ジュリエットはふつうに若くて可愛い森川葵だったのですが、おそらく10回以上キスシーンがあったので、彼女は大丈夫なんだろうかと心配してしまいました。
セリフの大部分は原作のとおりで、正直まどろっこしく感じるところもありましたが、有名なバルコニーのシーンでロミオが子どものようにはしゃぐのは微笑ましく、ジュリエットが少女の気まぐれでロミオを振り回すところも「そうか、そういうことか」と納得させられ、乳母と両親に反逆するジュリエットの若さゆえの頑固さも気持ちよく、ラストシーンではなんだか心打たれている自分に気づきました。
個人的なツボは、バルサザーの「ああは言ったものの」棒読みシリーズ。
でも、ロミオとジュリエットを原案に思いっきりクドカンが書き換えたものだともっと楽しめるだろうな、という気もしました。
ちなみにジュリエット役は、当初満島ひかりの予定だったんですよね。それはそれでどんな風になったか気になるところです。
シェイクスピア全集 (2) ロミオとジュリエット (ちくま文庫)
- 作者: W.シェイクスピア,William Shakespeare,松岡和子
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スカイライト(新国立劇場プレビュー公演)
観劇日:2018年12月2日
劇場:新国立劇場
上演時間:2時間45分(休憩有)
ナショナルシアターライブで上映されたこともあるデヴィッド・ヘアーの戯曲の日本語上演。今日のプレビュー公演後、3日間劇場を閉めてさらに稽古をし、本公演を迎えるとのことでした。
【あらすじ】
ロンドンの外れで教師をしているキラ。彼女のアパートを、元不倫相手トムの息子が3年ぶりに訪ねてきて、母親が1年前に無くなったと言う。そして同じ日の夜、トム本人もアパートを訪れる。最初は当たり障りのない話をしている2人だったが…。
【感想】
劇場に入った途端「ああ、これ好きなタイプの空間だ」と幸せな気持ちに。
以前WOWWOWで観た緒形拳、若村麻由美バージョンよりも、言葉やテンションが自然に日本語化されていると感じました(でも、たとえばウィンブルドン=田舎、というのは、やはりすぐにわかってもらうのは難しいなと感じましたが)。舞台美術もイギリス版からアレンジされていて、美しかった。
トム役の浅野雅博さん、写真で見るより実物の方がずっとかっこよかったです。スリムで身体能力高そうで、ちょっと大泉洋みたい。やり手の実業家の雰囲気がよく出ていました(それにしてもウィスキー飲みすぎ)。
蒼井優ちゃん、すごいセリフ量で最初から最後まで出ずっぱりなのに、余裕すら感じさせる落ち着いた存在感。キラの包容力と脆さ、意志の強さがいい感じに共存していました。細くて顔小さくて可愛いかった。
息子エドワードの葉山君は、どもりが日本語っぽくて自然だったけど、セリフを噛んだのか、どもりの演技なのかよくわからない感もありました。どもりながらも、もう少しテンポが流れればいいのにと思いました(何様)。
この作品が大好きで、ナショナルシアターライブでは複数回観ましたが、日本人キャストが日本語でやるものを観ると改めて理解が深まる面もあって、本当に豊かな時間を過ごさせていただきました。「誰も知らない個人的なゴールを見つければいい」のセリフを反芻したい気持ちになったのは、日本語だから、より親近感をもって届いてくるのかな、と思ったり。
開始前に、演出の小川絵梨子さんのご挨拶もありました。TOHOシネマズ日本橋の「イェルマ」上映時トークショーでもお話を聞きましたが、飾り気がなくて自然体で、知ったかぶりしない、素敵な方だなぁと思います。
この舞台が今後どんな風に味付けされるのか、是非本公演も観てみたい気持ちになりました。
NYで女性特有の問題で困った時
このサイトを見に来ている方は女性がほとんどのようなので、NYで生理用品が買える場所について書いておきます。
本当はそんな予定ではなかったのに、急に生理が来て困ることってありますよね。私も2度ほどそんな目にあって、生理用品を売っているところを汗だくで探し回った経験があります。
私が購入したのは、以下の2箇所です。
1.ホテルの売店
2.Duane Reade(デュエイン・リード)
デュエイン・リードは日本のドラッグストアみたいなところで、ニューヨークのあちこちにあって、水なども買えます。私の行ったところは、レジのお姉さんも感じがよかったです。
ただし、やはり日本の製品の方が性能はいいです。個人的には、日本で普段使うより一回り大きいものを買っておいた方が安心だと思います。
そして、万一ベッドのシーツを汚してしまった場合は、気づいたらすぐにシーツの裏側にティッシュをあてて、濡れたタオルでシーツの表側からトントン叩けば、汚れがティッシュに移動して、かなり目立たなくなります。
以上、誰かのためのお役立ち情報でした。
巴里(パリ)のアメリカ人
2019年1月から劇団四季で上演開始の「パリのアメリカ人」。その元ネタであるジーン・ケリー主演の映画をレンタルで観てみました。さわやかな恋愛ものかと思いきや、意外と込み入った話。脚本は「マイ・フェア・レディ」のアラン・ジェイ・ラーナー。
【あらすじ】元軍人のアメリカ人ジェリーは、パリで売れない絵描きとして暮らしている。ある日、通りで絵を売っていたところ、裕福なアメリカ人女性ミロが彼の絵を気に入り、スポンサーになると申し出る。ミロは明らかにジェリーに気のある様子。彼女の支援を受けるジェリーだが、カフェで出会った踊り子のリズに一目惚れ。リズもジェリーに好意を抱くが、彼女にはアンリという売れっ子歌手の恋人がいた。互いにスポンサーと恋人の存在を隠して会う2人だったが…。
【以下、ネタバレを含む感想】
今やジャズのスタンダードナンバーとなっているガーシュウィンの名曲が数多く登場する作品。「アイ・ガット・リズム」が子ども達に囲まれて歌われた歌だとは思わなかったし、「ス・ワンダフル」が、あんな微妙なシチュエーションで使われた曲だとも思いませんでした。「わが愛はここに(Our Love Is Here to Stay)」はジェリーとリズのロマンスのテーマとして効果的に使われていました。
ジェリー(ジーン・ケリー)はあれだけタップが上手なんだから、絵描きでいるより、ダンスで生計を立てればいいのに、と思いました。なぜジェリーがダンスが上手いのかという説明もないし。
リズに対しては、恋人がいるのになんでこの女はジェリーと会い続けるんだろうと思いましたが、最後の告白で、まあまあ納得。リズに「アンリと結婚する」と言われた後、ジェリーが急にミロを誘うあたりが生々しい。しかし、キスシーンはリズとのシーンより、ミロとの方がしっくり来ました。
途中のジェリーの夢想から始まる、ジーン・ケリー最大の見せ場であろうダンスシーンは、この時代の映画にありがちですが、正直長い。個人的にはアステアの品の良さと軽やかさの方が好みです。
リズ役のレスリー・キャロンはこれがデビュー作。笑顔が華やかですが、動きも演技も少し固いかなという印象。
ピアニストのアダムを演じたオスカー・レヴァントは彼自身ピアニストで、指がめちゃめちゃ回る人でしたが、ジェリーとアンリの間に挟まれるシーンなど、演技もいい味出していました。
来年の劇団四季版は、2014年にパリで(後にブロードウェイで)上演された舞台を元にしているようですが、公式ページを見ると随分映画とは筋が違うようです。映画は話としてはこなれてない感じもあったので、どんな風に整理されているのか観てみたい気がします。
ジャージー・ボーイズ(神奈川県民ホール)
観劇日:2018年11月10日
劇場:神奈川県民ホール
2019年ロンドン上演の「バイオレット」の紹介記事で、イギリスの演出家が日本版ジャージーボーイズを高く評価していたので、チケットを取ってみました。演出は故蜷川幸雄氏の弟子である藤田俊太郎氏。9月末の台風で中止になった分の振替公演だったようです。
【あらすじ】
1950年代のニュージャージー。トミー・デヴィートは独特な高音の美声を持つフランキーをバンドに誘う。メンバーの入れ替わり、バンド名の変更などを経て、トミー、フランキー、ボブ・ゴーディオ、ニック・マッシのカルテット「フォー・シーズンズ」が誕生。彼らの歌はヒットし、一世を風靡する。しかしメンバー間に互いに対する不満が出始め、トミーの借金が発覚したことで、その分裂は決定的なものとなり…。
【以下、ネタバレありの感想】
トミーの借金を肩代わりして歌い続けるフランキーが健気で、特に後半は感情移入して観ました。イタリア系の人は情に厚いんですね。
1番のハイライトは、やはり「君の瞳に恋してる(Can't take my eyes off you)」。なかなかレコーディングをさせてもらえなかったこの曲、満を持しての演奏シーンでしたが、これは聴けてよかった。ミラーボールも華やかで、テンションが上がりました。
メンバーの中ではちょっと引いたところからグループを支えるボブ・ゴーディオがお気に入り。前半ほとんど喋らないで、10年経ってトミーと同室のホテル暮らしの不満を吐き出すニックも良かった。
前半は色々とムラがあって、のれなかったのが残念でした。ウィキペディアによると、春夏秋冬の4部構成だったようですが、あまり季節感はなくて、言われないとわかりませんでした。話の流れは把握したので、機会があれば海外でも観てみたいと思います。
ちなみに、フランキー・ヴァリ本人の「Can't take my eyes off you」をyotubeで聴いてみたところ、ゆっくり目のテンポで、丸みを帯びた優しい声でした。この歌の背景にあんなこと、こんなことがあったのだなと思うと、感慨深いものがありました。
ヴェリー・ベスト・オブ・フランキー・ヴァリ&ザ・フォー・シーズンズ<ヨウガクベスト1300 SHM-CD>
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